中学生の不登校の現状
不登校の中学生の割合
文部科学省の令和4年度の調査によると、中学生の不登校の人数は193,936人で、前年度から更に増加しています。
これは小学生の不登校の人数105,112人の約1.8倍に当たります。
中学生全体に占める不登校の割合は6.0%で、小学生の1.7%の約3.5倍の高さです。
つまり、中学生では20人に1人以上の割合で不登校の生徒がいるという憂慮すべき現状があるのです。
中学生という多感な時期に、学校生活に馴染めず苦しんでいる生徒が多いことがわかります。
親としては我が子の変化に気づき、適切にサポートしていくことが大切です。
90日以上欠席の不登校生徒の割合
不登校の中学生のうち、実に61.2%が年間90日以上も学校を欠席しているという調査結果が出ています。
90日というと1年の約1/3に当たり、長期間学校から離れている状態が続いていることになります。
学校を少し休んだ程度ならまだ戻りやすいかもしれませんが、こうして長期化すると学校生活に復帰するのはなかなか難しくなってしまいます。
勉強面でも遅れが出てきて、余計に学校に行きづらくなる悪循環に陥りがちです。
だからこそ、初期段階で不登校のサインを見逃さず、早めに手を打つことが肝心なのです。
生徒の変化を敏感に感じ取り、学校とも連携しながら、長期化する前に対応していくことが求められます。
中学生が不登校になる主な原因
無気力・不安
中学生の不登校の原因として最も多いのが、「無気力・不安」で、全体の51.8%を占めています。
中学生は思春期の真っ只中で、自分の存在意義や将来への不安を感じやすい時期です。
勉強や部活、友人関係などで上手くいかないことがあると、自信を失い無気力になってしまうことがあります。
また、周囲の環境の変化についていけず、漠然とした不安を抱えることもあるでしょう。
こうした心の状態が続くと、次第に学校に行く意欲を失ってしまうのです。
無気力や不安の背景には、様々な要因が複雑に絡み合っていることが多いため、一概には言えません。
しかし、子供の気持ちに寄り添い、じっくりと話を聞いていくことが大切です。
必要に応じて、カウンセリングなどの専門的な助言を求めることも有効でしょう。
生活リズムの乱れ・遊び・非行
中学生の不登校の原因の2番目に多いのが、「生活リズムの乱れ・遊び・非行」で、11.4%を占めています。
思春期の中学生は、夜更かしをしてゲームやSNSに熱中するなど、生活リズムが乱れがちです。
また、遊びに夢中になるあまり学校を休んでしまったり、非行に走ってしまったりすることもあります。
こうした問題は、親の監督不足や、子供との信頼関係の希薄さが背景にあることが少なくありません。
親は子供の生活習慣を把握し、適切な生活リズムを作れるようサポートすることが求められます。
そして、日頃から子供とコミュニケーションを取り、信頼関係を築いておくことが何より大切だと言えるでしょう。
友人関係の問題
中学生の不登校の原因の3番目は、「いじめを除く友人関係をめぐる問題」で、9.2%を占めています。
中学生は友人関係を特に大切にする傾向があり、その分トラブルも起こしやすい時期です。
好きな人ができて告白して振られたり、親しい友達ができて寂しい思いをしたりと、恋愛や友情の問題は思春期の中学生にとって切実な悩みとなります。
グループ内の人間関係のもつれも、心の大きな負担になるでしょう。
こうした人間関係のストレスから、学校に行くことが苦痛になってしまう生徒は少なくありません。
親としては、子供の様子の変化を敏感に感じ取り、話を聞く姿勢を示すことが肝要です。
そして、友人関係の悩みは誰にでもあることを伝え、一緒に解決策を考えていくことが大切でしょう。
親子関係の問題
中学生の不登校の主な原因の4番目は、「親子の関わり方」の問題で、7.4%を占めています。
親から精神的に自立したいと考える一方で、まだまだ親に頼りたい気持ちもある微妙な時期です。
親の過干渉や押しつけがましい態度に反発を覚えたり、逆に親の無関心さに寂しさを感じたりするなどして、親子関係がぎくしゃくしてしまうことがあります。
不登校の背景に親子関係の問題がある場合は、親自身が謙虚に反省し、関わり方を見直すことが必要です。
子供の気持ちを尊重しつつ、適度な距離感を保ちながら、温かく見守っていく姿勢が求められるでしょう。
時には家族カウンセリングなどの助言を得ながら、親子の絆を取り戻していくことが肝要だと言えます。
不登校の中学生へ親ができる7つの対応
休むことを認める
不登校の中学生に対して、親がまず取るべき対応は、「学校を休んでもよい」と伝えることです。
不登校の子供は、学校に行けないことへの罪悪感や焦りを感じているものです。
そんな子供の心情を理解し、休養の必要性を認めてあげることが大切です。
休むことを認めてもらえると、子供は安心して心身を休めることができるでしょう。
ただし、単に休ませるだけでは問題の解決にはなりません。
休養と並行して、不登校の原因を探り、解決に向けて話し合っていく必要があります。
子供と向き合う時間を大切にしながら、ゆっくりと前に進んでいきましょう。
子どもの努力を認める
不登校の子供は、学校に行けないことに強い劣等感を抱いていることが少なくありません。
そんな子供に対して、今までよく頑張ってきたことを認め、ねぎらいの言葉をかけてあげましょう。
たとえ学校に行けていなくても、不登校に至るまでには、子供なりに精一杯努力してきたはずです。
その頑張りをしっかりと評価し、子供の自尊心を高めてあげることが大切だと言えます。
そうすることで、子供は自分を肯定的に捉えられるようになり、新しいことにチャレンジする意欲も湧いてくるでしょう。
小さな進歩も見逃さず、子供の頑張りを認め続けていくことが何より重要です。
子どもの気持ちに寄り添う
不登校の子供の心情を理解するためには、子供の話に耳を傾け、共感的に受け止めることが何より大切です。
子供の訴えを頭ごなしに否定したり、安易に解決策を提示したりするのは避けましょう。
まずは子供の気持ちに寄り添い、じっくりと話を聞く姿勢が求められます。
子供の不安や悩みを受け止めた上で、一緒に解決策を考えていく、そうした親の姿勢が、子供の心を開き、親子の信頼関係を築いていくことにつながるはずです。
時には背中を押すことも必要ですが、基本的には子供のペースに合わせて、ゆっくりと歩んでいくことが肝要だと言えるでしょう。
学校と連携を取る
不登校の解決に向けて、親が一人で抱え込むのではなく、学校と連携を取ることが大切です。
子供の学校での様子や友人関係など、家庭では分からない情報を得ることができます。
また、担任の先生やスクールカウンセラーに相談することで、専門的なアドバイスがもらえる可能性もあります。
適切な支援策を考える上でも、学校との連携は欠かせません。
定期的に学校と連絡を取り合い、情報共有しながら、子供の支援に取り組んでいきたいものです。
別室登校の提案
教室に入ることに強い抵抗を感じている子供には、「保健室登校」や「別室登校」を提案してみるのもよいでしょう。
通常の教室ではなく、保健室や別室で過ごすことで、子供の心理的負担を軽減できます。
まずは安心できる居場所を確保し、少しずつ他の生徒との交流の機会を増やしていく、そんなステップを踏むことで、最終的には教室復帰につなげていくことができるはずです。
別室登校は、学校復帰に向けた有効な手段の一つなので、学校と相談しながら、子供に合った方法を考えていきましょう。
専門機関への相談
不登校の背景が複雑で、親の手に負えないと感じたら、専門機関に相談するのも一つの方法です。
児童相談所や教育センター、民間の相談機関などで、専門家のアドバイスを受けられます。
心療内科などの医療機関に相談するのもよいでしょう。
専門家の助言を参考にしながら、子供の状況に合った支援策を立てていくことができます。
必要に応じてカウンセリングを受けたり、適切な治療を受けたりすることも検討したいものです。
親が一人で問題を抱え込まず、専門家の力を借りることも大切だと言えます。
学校外の学習機会の検討
不登校が長期化すると、学習面での遅れが心配になるものです。
そんな時は、学校以外の学習の場を利用するのも一つの方法です。
フリースクールや通信制の学校、家庭教師などを活用して、学習を続けていくことができます。
学校外の学習の場では、子供のペースに合わせて柔軟に対応してもらえるのがメリットです。
学校とは違う環境で学ぶことで、子供の学習意欲を高めることもできるでしょう。
不登校の期間が長引いても、学びの機会を確保し、基礎学力を身につけていくことが大切だと言えます。
子供の状況に合わせて、適切な学習の場を選択していきたいものです。
不登校でも高校受験・進学はできる!
不登校の子どもの高校進学率
不登校の中学生の多くは、「高校受験に不利になるのではないか」と不安を抱えています。
確かに、中学校を卒業してすぐに高校等に進学した生徒の割合は、不登校生徒で81.4%と、一般の中学卒業者の進学率98.8%に比べて低くなっています。
しかし、8割以上の不登校生徒が高校に進学しているという事実は、不登校でも高校進学の道は十分に開かれていることを示しています。
大切なのは、不登校の状況に合った受験方法や進学先を選ぶことだと言えるでしょう。
不登校だから高校に進学できないわけではありませんので、自分に合った道を探りながら、希望を持って進路選択に取り組んでいきたいものです。
私立高校受験
不登校の中学生が高校進学を目指す上で、私立高校受験は有力な選択肢の一つだと言えます。
私立高校の中には、学力試験の結果を重視し、調査書(内申書)をあまり考慮しない入試制度を採用しているところがあるからです。
欠席が多くて調査書が不利でも、学力試験でよい成績を収められれば、合格のチャンスがあるわけです。
また、私立高校は独自のカリキュラムを持っているところが多く、不登校の生徒の学びなおしに適した環境が整っていることも少なくありません。
自分に合った私立高校を見つけることができれば、新たな学校生活をスタートさせるよいきっかけになるはずです。
学校見学や相談会に足を運んで、情報収集することから始めてみましょう。
通信制高校
通信制高校は、自宅学習を中心としながら、年に数回のスクーリングに参加することで卒業できる学びの選択肢の一つです。
全日制の高校に通うことが難しい不登校生徒にとって、通信制高校の学習スタイルは非常に魅力的だと言えるでしょう。
自分のペースで学習を進められるため、心理的な負担が少ないのがメリットです。
また、通信制高校の中には、不登校経験者を対象とした特別なカリキュラムを用意しているところもあります。
仲間と共に学び直しができる環境は、不登校からの再出発を後押ししてくれるはずです。
もちろん、通信制高校を卒業した後の進路も、全日制高校の卒業生と変わりません。
大学進学や就職など、自分の目指す道に進むことができるでしょう。
定時制高校
定時制高校は、夜間や昼夜間に授業を行う公立高校で、学習面でのサポートが手厚いことでも知られています。
中学時代の学習に自信がない不登校生徒でも、基礎からしっかり学び直すことができるのが魅力です。
定時制高校に入学する生徒の中には、不登校の経験がある人や高校中退からやり直す人など、様々なバックグラウンドを持つ人がいます。
ともに学び合う仲間と出会えることは、不登校を乗り越える大きな励みになるでしょう。
定時制高校では、少人数のクラス編成で、教師との距離が近いのも特徴です。
一人ひとりに目が行き届く環境の中で、自分に合ったペースで学習を進められるでしょう。
学習面だけでなく、進路のサポートも充実しているため、自分の将来を考えながら高校生活を送ることができるはずです。
不登校の中学生への支援状況
学校外の機関での支援
不登校の中学生が学校以外で相談や指導を受けられる機関には、様々なものがあります。
例えば、教育支援センターや青少年センター、児童相談所などの公的機関や、フリースクールやNPO等の民間団体などが挙げられます。
令和4年度の調査では、不登校の中学生のうち、34.6%が学校外の機関等で相談・指導等を受けていました。
学校外の専門機関では、不登校の子供一人ひとりに合わせたきめ細やかな支援を行っています。
学校とは異なる環境で、子供の心に寄り添いながら、自己肯定感を高めるサポートをしているのです。
こうした第三者の支援は、不登校の子供にとって、新しい視点や気づきを得るよい機会になるはずです。
また、学校復帰だけが唯一の選択肢ではありませんので、学校外の支援機関を上手に活用しながら、子供が自分の居場所を見つけていく過程を、温かく見守っていきたいものです。
学校内の機関での支援
一方、不登校の中学生が学校内で相談・指導等を受けている割合は、43.9%にのぼります。
多くの学校では、生徒指導担当の教員やスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーなどを配置し、不登校の生徒への支援体制を整えています。
担任教師による定期的な家庭訪問や、保健室登校の受け入れなども、学校内での支援の一環だと言えるでしょう。
教師やスクールカウンセラーによるカウンセリングを通して、子供の抱える悩みに寄り添い、解決への糸口を見出していきます。
そうした地道な支援の積み重ねが、子供の心の安定につながっていくのです。
また、クラスメイトとのつながりを途切れさせないために、学級通信などを活用して、子供の学校とのつながりを保つ工夫も大切だと言えます。
学校内外の支援者が連携を取りながら、息の長いサポートを続けていくことが重要です。
支援を受けていない生徒の割合
見逃せないのが、学校内外のどの機関でも相談・指導等を受けていない不登校生徒の存在で、その割合は、令和4年度の調査で38.2%にのぼっています。
つまり、不登校の中学生の約4割は、誰にも相談できずに孤立している状況にあるのです。
不登校の子供の中には、人間関係の築き方がわからず、支援を求めることができない人も少なくありません。
また親も、周囲の目を気にして、なかなか援助を求められないケースがあります。
学校に行かない子供を批判的に見る風潮が根強くあることも、支援を妨げる要因の一つだと言えるでしょう。
しかし、不登校の子供を孤立させてはいけません。
一人で抱え込まず、勇気を出して支援を求めることが何より大切なのです。
子供の変化に気づいたら、躊躇せずに学校や専門機関に相談することで、子供の新しい可能性を切り開くきっかけになるはずです。
不登校は、誰にでも起こりうる問題なので、社会全体で理解と支援の輪を広げていくことが、いま強く求められているのです。
※支援状況に関する割合の合計が100%を超えているのは、一人の生徒が複数の機関から支援を受けているケースがあるためです。
自宅学習による出席扱い制度
文部科学省は令和元年に、不登校の小中学生を対象とした「出席扱い制度」を発表しました。
この制度は、一定の条件を満たしICT等を使ったオンライン学習を行うことで、学校の出席扱いとするものです。
令和3年度の実績では、小学校の不登校児童の約5.8%、中学校の不登校生徒の約4.1%が本制度で出席扱いとなっています。
まだ浸透しているとは言えませんが、年々増加傾向にあります。
出席扱い制度の目的は、スムーズな学校復帰を促すことですが、自宅学習を認めることで、勉強の遅れを防ぎ、登校する意欲の向上を期待しています。
制度を利用するには、保護者と学校の緊密な関係、計画的な学習プログラム、対面指導の実施など、7つの要件を満たす必要があります。
該当するかどうかの判断は教育委員会や学校が行うため、まずは担任に相談し、学校と連携しながら進めていくことが大切です。
制度が利用できる条件や出席扱いに向けた具体的な方法に関しては「すららで不登校を出席扱いにする方法!学校への申請や注意点を解説」で詳しく解説しているので、参考にしてみてください。